「ファーストライトシリーズのリニューアルを考えている。君が要望する改善点を教えてほしい。」と、シンクタンクCEO のダグから連絡をもらったのは、2019 年のことだった。
当時から「ファーストライト40L」は私のメインバッグだった。大口径の望遠レンズをボディに装着したまま収納して背負い、長い距離を歩く。使い込んでいく中で感じていたのは、このバッグの最も優れた点は「シンプルさ」であるということ。「リニューアルは、ぜひともその強みを残したままにしてほしい。」私はそのことを真っ先にダグに伝えた。タフな環境下で歩き続けるとき、野生動物と至近距離で相対したとき、自然写真家は、目の前にある状況への対応に専念する必要がある。複雑なギミックによる利便性は、かえってその集中を妨げかねない。例えば「ローテーション」シリーズはカメラを素早く取り出せる優れたカメラバッグだが、そのコンセプトと「ファーストライト」は別の流れにある、というのが私の解釈だ。しかし、当時の「ファーストライト」シリーズにもあれば良いと思う点もいくつかあった。例えばウエストベルトにポケットがあれば、予備バッテリー等、すぐ取り出したいアイテムをストレスなく収納できる。いくつかのそんな要望をまとめたメッセージを、英語の辞書片手に書いて送った。
3年が経って、再び彼から連絡がきた。「プロトタイプが出来上がったので、テストしてほしい。」と。受け取ったプロトタイプは、従来の使いやすさをブラッシュアップし、それを邪魔しない形で、ニーズに合わせて自由にアジャストできる見事なカメラバッグに進化していた。取り外し可能なトップポケット、サイズ(深さ)を拡張できるフロントポケットがその最たるものだろう。これらは、撮影機材の他に防寒具などさまざまなギアの収納が必要なネイチャーフォトグラファーにとって、非常に嬉しい改良点だ。早速フィールドに持ち込んで、いくつかの要望点を再び絞り出してダグに伝え
た。こうして誕生した更に完成度の高い「ファーストライト」を、是非、皆さまに見ていただきたい。